夫の性癖を受け入れた理由

複数でのセックスがしたい男性

性癖カウンセリングでは、犯罪行為ではないものの、「自分でもやめたいと思っている」あるいは「パートナーが受け入れてくれない」という性癖の相談を主として受けています。

性癖の中で比較的多いのは「複数でのセックス」に関するものです。
性風俗でも複数の女性を指名する男性は少なくないと聞きます。
複数の女性をはべらせてサービスされてみたい、という願望は男性にとってそれほど特異なことではないのでしょう。

しかし彼女や妻という特定のパートナーを交えて複数の男女で、となるとそういう嗜好のある女性でないと応じてもらうのは難しいと思います。

時々男性から相談されるのが、「3P(3人でのセックス)をしてみたいが妻が応じてくれない」というものです。
パートナーを交えた3P願望について聞くと、“2人の女性に同時にサービスされたい”のではなく、大半が“男性2人とパートナーの女性1人”です。
男性2人といっても、実際にセックスをするのは妻とサイトで調達してきた初対面の男性であって、夫本人は手を出さず見ているだけがいい、と言います。
”他の男性に身体を許す妻”を見て嫉妬し、その嫉妬を性的興奮に変えるのだそうです。
女性の私からすると自分勝手な妄想だなあと思うのですが、お会いすると皆まじめで礼儀正しく、妻への愛情が深い方に思われます。

 

 

3Pを夫に求められた2人の女性

しかし実際、妻がそのような要望に応じるものでしょうか?

以前ちょうど同じ時期に、同じような状況の2名の女性から「夫に3Pを求められて困っている」という相談を受けました。
1人は夫への嫌悪感を覚えるようになり、うつの症状も出ていました。
私は「抵抗があるのなら毅然と断ってもいいんですよ」と伝えましたが、夫から執拗に迫られしばらく悩んでいました。
夫には「おまえじゃもう興奮できない」とまで言われ傷つき、最終的には夫をあきらめさせることができたものの、妻の不信感が消えずその後夫婦仲に溝ができたようでした。

もう1人は結果として夫を受け入れました。
2組の夫婦の違いは何だったのでしょうか。
もちろん妻のキャパに個人差はあるでしょうが、夫の努力の差が結果につながったのではないかと私は感じています。
(ご相談内容は個人が特定できないよう変更を加えてあります)

 

 

夫の家庭貢献で軟化した妻

Sさん(38)と夫は高校の同級生で、何度か別れた時期も含めれば20年以上の付き合いです。
定期的にセックスもある仲の良い夫婦でしたが、ある時夫から3P相手募集のサイトを見せられ、「一度試してみないか」と提案されました。
Sさんは見た目もおとなしそうなごく普通の主婦で2人の小学生のいいお母さんです。最初言われた時は即座に却下したのですが、度々もちかけられるようになりました。
「なんでそんなことをしたいの?」
と聞くと、
「新しい刺激がほしいから。さすがにもう飽きてきたと思わない?でも僕たちの関係をよくするためなんだよ」
と言われ、これまで夫が浮気もしないで自分を大切にしてくれてきたこともわかるだけに、頑なに断るのもかわいそうに思えてきたそうです。

私は「いくらご主人が望むからと言っても、Sさんが気が進まないことは応じなくてもいいんですよ。ご自身が納得できるかゆっくり考えていいと思いますよ」
と伝え、Sさんも当面は断るつもりだと言っていました。

そのため、数か月後にSさんと会った時に、
「夫の要求に応じました」
と聞いてとても驚きました。

どうして応じることができたのかSさんに話を聞きました。

夫は妻が応じないからといって機嫌を悪くするような人ではありません。
しかし、妻の気持ちを和らげようと、日頃から努力をするようになりました。
もともと家事育児を積極的にしてくれる方ではありましたが、ますます熱心にやってくれました。
管理職となり激務の中、時間を見つけては掃除洗濯風呂掃除と活躍し、休日にもゴロゴロすることなく息子たちを連れて遊びにいってくれました。

でもそれだけでは「ご機嫌取りをしているだけでしょ」と心が動かなかったかもしれません。
Sさんが妥協してあげようと思った理由は、
「夫がそういうことをしたいのは、マンネリ打破のための刺激がほしいからです。他の男性としている私を見て自分の嫉妬心を煽りたいということでした。夫は、『僕の欲望のためだけではなく、最終的には君のためにもなると思っている。君が楽しめるようなシチュエーションを演出するつもりだし、これからの僕たちのセックスもよくなると思う。一度だけでいいから試してほしい』と切々と訴えてきました。その姿を見て、まあいいか、と自然に思えたんです。夫が本当に2人のセックスをよくしたいと思っていることが伝わったから」
とのことでした。

Sさんが応じると夫は大喜びし、相手の男性はサイトのプロフィールからSさんの好みの人を選ばせ、決してSさんが嫌がる行為はしないと相手男性とも入念に打ち合わせをして3人でホテルで会ったとのことでした。

今はどう思っているのかSさんに聞くと、
「想像したよりは嫌ではなかった。夫が喜ぶなら割り切ってもいいと思った。あまり頻繁にはしたくないけど、年に1回くらいは夫へのご褒美で妥協してあげようかと思っています」
とのことでした。

本人が納得のいく選択をしたのならもう言うことはありません。
ただ、そのような出会い系サイトには危険が伴うこと、知らない人と会うのは性感染症や盗難、盗撮などの危険があることを念頭に置いておくことを伝えて終了しました。

 

 

円満な夫婦関係があることが大前提

応じることの是非はともかくとして、妻が妥協したケースは、日頃からよく会話がありコミュニケーションが取れている関係であること、夫は仕事熱心で家庭も疎かにしない優しい男性であることが前提になっています。

現実として、妻が応じてくれたケースは稀です。
大半は妻が最後まで拒否します。
男性が自分の性嗜好を受け入れてもらいたいのであれば、相手に求めるだけでなく、自ら日常生活においての努力をしなければ話にならないということは明言しておきたいと思います。