特定の物にこだわることを一般に「〇〇フェチ」と言います。
性嗜好の診断基準では「フェティシズム障害」に分類されます。
「生命のない対象物の使用、または生殖器以外の身体部位への著しい特異な関心」
(DSM-5より)
を指しています。
相談で多い対象物は、女性の下着、靴下やストッキング、靴です。
下着に興味がある男性は少なからずいるだろうし、それほど変わった性癖ではないとも言えます。
それ自体に違法性はないので、本人が気にしていなければ問題ない嗜好です。
しかしわざわざカウンセリングに来る方は自分のフェチに不安を感じています。
何が心配なのか?を一緒に考えていくと、大体次のような答えが出てきます。
・下着の窃盗は考えたこともないが、もし目の前に洗濯物がぶら下がっていたら盗んでしまうのではないか。
・前方に好みの靴下をはいた女性がいた時に後をつけたくなってしまった。エスカレートしたらストーカーになるかもしれない。
・女性との性行為の時に「この靴下をはいて」と頼みたいが、きっと引かれるだろうから言えない。
・妻に隠して収集しているのがバレたら離婚になるかもしれない。
・ネットで画像を見たり、街中で見かけた女性を思い出してマスターベーションをする。人に知られるわけではないし問題ないと思いつつも、そんなことばかりしている自分が情けなく自己嫌悪に苛まれる。
上記の悩みを大別すると、
犯罪化する不安
パートナーに知られる不安
自己嫌悪感
といったことになるでしょうか。
また、「自己嫌悪感」を更に何に対しての自己嫌悪か考えると、
「物に執着するバカバカしさ」
「性的ではない普通の日用品をマスターベーションのオカズにしていると、その物を冒涜している気がする」
「自分は特殊な人間なのではないか。人として劣っているのではないか」
と言います。
犯罪化するかも、という予感がある場合は、やはり危険な状況を避ける必要があります。
引き金を引かないためには、リスクのある場所に行かない、状況を作らない、ストレスをためないなど精神状態をコントロールする方法を考えます。
パートナーとの関係性においては、相手のキャパにもよるので一概に言えませんが、相手がどうしても許容できなさそうな嗜好であるのなら、隠しておくしかありません。
心の中は自由です。頭でそれを想像していたとしても、現実にパートナーと滞りなく性行為ができているのであれば、当面はよしとしてもいいでしょう。
ただ、パートナーとその趣味を共有したいのであれば、それをどのように伝えていくか、コミュニケーション力が問われることになると思います。
自己嫌悪感については、私からは、
「そのような嗜好を持っている人は決して少なくない。自分の中で楽しんでいるだけなら気にしなくていい」
「マスターベーション依存の基準は難しいが、仕事中や外出時などにも衝動が起きたり、1日に何度もしないと気が済まないといった強迫的な状態になっているのでなければ心配しなくてもいいだろう」
とお伝えしています。
性に関すること、とりわけフェチを友達に話す人はあまりいないので、”自分だけがおかしいのでは?”と不安になりがちです。
ネットで検索すれば似たような嗜癖を語る人がたくさんいることはわかりますが、中には極端な事例もあってどこまで信用していいかわかりません。
結局、何が普通で何が異常なのか、基準がないから不安になるのです。
性に関しての「普通」を定義することはできませんが、特定の物に興奮するという程度であれば、特に問題ないと考えて差し支えないと思います。